ケータイ鳴ってる。ケータイ鳴ってるよー。
いや、いいねん、いいねん。こんにちは、夏口です。然らば社内近景スケッチを。
「夏口さん、このタイミングで変更修正の指示受けて、明日の納品、間に合うんですか」
「いや、工程はちゃんと出してるんや。クライアントの方で、どうしてもこの形状変更だけは
反映したいらしい」
「私は帰りますからね。昨日も帰ってないんですから」
「・・・ここだけ、直れへんかな」
「あー、魔法がほしい」
「あほっ。江戸時代の人からしてみー、このコンピュータがパチッとつく時点で、すでに魔法や」
「あー、魔法的な何かがほしい」
「かのアーサー・C・クラークも『充分に発達した科学技術は、魔法と見分けが付かない』と
いう有難い言説を残している」
「それ誰ですか」
「なに。CG屋として、あのクラークを知らずに」
「知ってますよ。『2001年宇宙の旅』の人でしょ。もー、2011年なんですけど」
「少しでもイイものを、と思うそのコダワリだけが、明日の自分を作るのだ。『2001年』の
完成度を見よ。監督をはじめ、スタッフの熱いコダワリなくしてあの作品はなかった」
「もっとスタッフの生活にコダワってほしいですけど」
「先日もテレビで、【コダワリは身を助く】の好事例を見た。高島忠雄の、顔が濃い方の息子が
音楽番組のパーソナリティーをしとった」
「それ知ってますよ」
「えらく音楽的素養のあるトークを楽しげに繰り広げとった。アレは音楽好きが高じて、
コダワってきたからこそ、きた仕事やな。頭から足の先までウソくさかったけどな」
「ウソくさいって失礼な。あの、ヤマダデンキじゃない方でしょ。彼はかなりのロック通だ
そーですよ。自分で言ってました。でも【ロック通】って恥ずかしいですけど」
「そう。【通】はいい。日本人はとかく【道】の方にすぐ持っていきたがるけど、
【通】は稚拙なアナロジーから逃れ、できる範囲で極北へ向かう可能性としてはありやと思う。
自称せん限り」
「ゴタクはいいですから、とっとと仕上げて帰りましょ。みんな、ちょっと集まってー」
こうしてまた、僕は魔法にかかった気分になる。
quod vide:
「シブすぎ技術に男泣き」 見ル野栄司著 中経出版
個人のコダワリ(特にものづくりに対して)が向かう地平はどこなのだろう。理工系の
いろんな職人が出てくるが、「設計は思いやり」の言葉はいい。漫画エッセイ。