ACT#005 ヤマダデンキじゃない方の、魔法的なナニか。              -あと、スタッフの対話

 
  ケータイ鳴ってる。ケータイ鳴ってるよー。

 いや、いいねん、いいねん。こんにちは、夏口です。然らば社内近景スケッチを。
 
 

 
 「夏口さん、このタイミングで変更修正の指示受けて、明日の納品、間に合うんですか」

 「いや、工程はちゃんと出してるんや。クライアントの方で、どうしてもこの形状変更だけは
  反映したいらしい」

 
 「私は帰りますからね。昨日も帰ってないんですから」

 「・・・ここだけ、直れへんかな」

 
 「あー、魔法がほしい」

 「あほっ。江戸時代の人からしてみー、このコンピュータがパチッとつく時点で、すでに魔法や」

 
 「あー、魔法的な何かがほしい」

 「かのアーサー・C・クラークも『充分に発達した科学技術は、魔法と見分けが付かない』と
  いう有難い言説を残している」
 

 「それ誰ですか」

 「なに。CG屋として、あのクラークを知らずに」

 
 「知ってますよ。『2001年宇宙の旅』の人でしょ。もー、2011年なんですけど」

 「少しでもイイものを、と思うそのコダワリだけが、明日の自分を作るのだ。『2001年』の
  完成度を見よ。監督をはじめ、スタッフの熱いコダワリなくしてあの作品はなかった」

 「もっとスタッフの生活にコダワってほしいですけど」
 
 
 

 「先日もテレビで、【コダワリは身を助く】の好事例を見た。高島忠雄の、顔が濃い方の息子が
  音楽番組のパーソナリティーをしとった」

 「それ知ってますよ」

 
 「えらく音楽的素養のあるトークを楽しげに繰り広げとった。アレは音楽好きが高じて、
  コダワってきたからこそ、きた仕事やな。頭から足の先までウソくさかったけどな」

 「ウソくさいって失礼な。あの、ヤマダデンキじゃない方でしょ。彼はかなりのロック通だ
  そーですよ。自分で言ってました。でも【ロック通】って恥ずかしいですけど」

 
 「そう。【通】はいい。日本人はとかく【道】の方にすぐ持っていきたがるけど、 
  【通】は稚拙なアナロジーから逃れ、できる範囲で極北へ向かう可能性としてはありやと思う。
  自称せん限り」

 「ゴタクはいいですから、とっとと仕上げて帰りましょ。みんな、ちょっと集まってー」

 

 

 こうしてまた、僕は魔法にかかった気分になる。



quod vide:

 「シブすぎ技術に男泣き」 見ル野栄司著 中経出版
   個人のコダワリ(特にものづくりに対して)が向かう地平はどこなのだろう。理工系の
   いろんな職人が出てくるが、「設計は思いやり」の言葉はいい。漫画エッセイ。
   

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